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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ラッピング車両(ラッピングしゃりょう)とは、車体にデザインを施すためにフィルム(ラッピングフィルム)を車体に貼り付けたバス鉄道車両などのことである。自社のブランドイメージの色を車体に施したり[1]、車体広告に利用されている。塗装(ペインティング)による「全面広告車両」は本名称の対象外であるが、本項目は交通機関の車体全面を使った広告も扱う。

ラッピングバスの例(関東バス)

車体デザイン

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1997年平成9年)に、日本貨物鉄道(JR貨物)所有の鉄道コンテナとタイアップして全国展開した、ラッピングコンテナ
※反対側面も同じである。
大阪府/元、梅田貨物駅にて、1997年6月13日撮影。)

鉄道車両などでは側面などにラッピングを施す例がある[2]。鉄道車両の場合、前面のみ塗装で側面はラッピングにしたり、ステンレス製車両やアルミ製車両では金属色をそのまま生かしたようなデザインも多い[1][2]

車体に広告等を施工する場合、塗装では施工や変更・復元に多大な手間を要するため、短期間の広告などは不向きで、デザインも制約が大きかった。

1990年代からフィルムを使う方法が普及した。あらかじめ粘着フィルムにデザインを印刷し、そのフィルムを車体に貼り付ける。その際、フィルムは部分的に切り取るなどし、ドアなどの可動部を支障したり、エンジン放熱用の穴をふさいだりすることがないように処理する。側面や後部の窓もメッシュ状のフィルムを使用することで、車内からの視界を損なわずに装飾に使うことが可能になっている。塗装に比べて施工や契約終了後の撤去作業が容易であるため、イベントや新製品などの短期間の広告にも向く。このように、車両をフィルムで包み込む (wrap) ことから「ラッピング車両」(ラッピング広告)と名づけられている。

ラッピングは塗装に比べ表面のつやなどに違いがある[1]。ラッピングは曲面や凹凸部分の施工が難しく、窓枠やドアのふちなどに車体色が残る場合があるなど難点もある[1]。多大な空気抵抗に晒され、気圧の激しく変化する航空機や、高速列車では全面に用いることはできない。

車体広告への利用

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歴史

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2000年(平成12年)4月に当時の石原慎太郎東京都知事の発案により、東京都交通局路線バス都営バス)に登場した時、マスメディアを通じて「ラッピングバス」の名称が広く使われ[3]、一般に普及した。

しかし、営業収入の赤字を補うため、バスなど車両の車体全面を広告媒体にする手法は、都営バスが最初ではなく、それ以前より世界的に行われていた。

日本の路線バスに限っても、1970年代から全国各地の地方路線バス事業者(青森市交通部くしろバス京阪バス、琉球バス(現琉球バス交通)など)で見られた。他の交通機関に広げれば、1964年昭和39年)に長崎電気軌道路面電車で実施されており、現在では路面電車やバスにおける全面広告は一般的な存在になっている。

野外の看板などと同様に、都道府県政令指定都市中核市屋外広告物条例の規制を受ける例が大半である。

広告の問題点

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屋外広告条例やラッピングの内容で問題となることもある。

日本では、主に京都市内で街の景観を維持するため屋外広告が規制され、京都市交通局を初めとする京都の中心街繁華街)を走行する路線バス各社は、京都の印象や景観にそぐわないラッピング車両の多くが短期間で契約解除となった例がある。京阪京津線においても、ラストランのためラッピング車両が走行したときは、滋賀県大津市から京都市山科区に入ってすぐに所在する四宮駅で即座に浜大津へ折り返すように要請されていた。

また、江ノ島電鉄はかつて企業の広告電車を多数運行していたが、電車が走行する鎌倉市の条例変更に伴い、全面広告をまとった電車の運行が中止されている。なお、営利を目的としない広告については従来同様全面ラッピングを行った車両が運行されている。

小田急電鉄では3000形の1編成を藤子・F・不二雄作品のラッピング車両「F-train」(エフトレイン)とし、沿線の藤子・F・不二雄ミュージアムの開館を記念したデザインで2011年(平成23年)8月より営業運転を開始した[4]。同社ではこのラッピングを車体塗装の変更と認識していたが、東京都は、車体に描かれた絵、商標、シンボルマーク(この例ではキャラクターとロゴ)などが、商業広告でなくとも屋外広告物に該当すると判断し、事前に許可申請を行わなかったこと、その面積が都条例の基準である車体一面の1/10を超えていることが条例違反にあたるとし、8月中旬、同社に対しその旨を指摘をした。同社は指摘を受けるまで違反に気づいていなかったとしており[5] [6]、当編成は車内の装飾はそのまま残し、予定の1年間より大幅に早い同年9月一杯でラッピングを終了した。その後、ラッピングのデザインを都条例に抵触しないものへと変更し、翌2012年(平成24年)7月から「F-train II」として運行を開始した[7]

媒体別の利用状況

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バス

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前述のように、一部の地方事業者で少しずつ採用されていたが、2000年に東京都交通局が路線バスに採用したことで、これまで全面広告バスのなかった土地にも普及し、現在では日本各地で見られるようになっている。公営・私営とも経営が苦しい事業者が多いため、運賃収入以外の収益源を確保する目的のラッピング車両の運行に際して、前述の東京都などで屋外広告物条例が改正された事例がある。

一般路線バスに広告を貼り付けるケースが大半だが、一部では高速バス観光バスコミュニティバスにラッピングを行っているケースもあり、宣伝のために乗客を乗せずに駅前などの繁華街を巡回する場合もある。旅客輸送を行わない宣伝カーは、車体形状がバスでも白ナンバーである。広告・宣伝用ではない特異例としては、自動車メーカーから、バス事業者へ短期間貸し出された車輌にそのバス事業者の塗装と同じラッピングを施し、他の車輌との外観を揃えたというケースもある。

車体全体を広告フィルムで覆うことから、バス停留所にいる利用者からは運行しているバス会社が分からなくなる弊害があるため、正面だけフィルムを貼らずそのままにしたり、側面の窓やドア付近にバス会社名を表示する事業者が多い。ラッピングの際には車両番号も隠されるため、ラッピングフィルムの上に新たに車両番号を表記する場合もある。

タクシー・ハイヤー

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タクシーハイヤーにもラッピング車両が存在する。

日本では北海道厚岸郡浜中町の霧多布中央ハイヤーの車両のうち2台が2012年よりルパン三世のラッピングハイヤーとなっている[8]。 東京都の共同無線タクシー協同組合(現・日の丸交通グループ)では、2012年のマレーシア独立55周年を記念して加盟タクシー100台にマレーシア政府観光局の観光キャンペーンのラッピング装飾を施している[9]。 日の丸交通では、アディダスがスポンサーとなり2014 FIFAワールドカップサッカー日本代表を応援する「円陣タクシー」として、ユニフォームをイメージした青のラッピング装飾が11台のトヨタ・プリウスに施された[10]。また日の丸交通ではミズノがスポンサーとなって2023年3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシックに併せて3台のトヨタ・ジャパンタクシーに専用ラッピングおよび野球ボールを模した球形の行灯が装着された[11]。コンドルタクシーグループでは、2016年11月より通訳システムを搭載することをアピールするため、同年11月12日に公開された映画『きんいろモザイク Pretty Days』と11月25日のBlu-rayボックス発売のPRを兼ねて保有車両の10台にラッピングが施された[12]

伊豆箱根タクシーでは、営業エリア内の沼津市が舞台のラブライブ!サンシャイン!!の主人公ユニット「Aqours」のキャラクターをデザインしたタクシーを9台運行している[13]

タクシーのラッピング化についてコンドルタクシーの岩田将克は、事故時の自社タクシーおよびクライアントのイメージダウンと広告の競合先の人に乗ってもらえなくなることを懸念してタクシー車両のラッピング化には消極的だったが、車両が目立つことで乗務員の意識向上に寄与していると述べている[14]

車体下部を掲出スペースとするパートラッピングも普及拡大が進んでおり、特にタクシー配車アプリ向けの展開が目立つ。

鉄道

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路面電車においては基本的にバス同様、車体のほぼ全体に広告を印刷したフィルムを張る手法である。バス同様に公営・私営とも経営が苦しいところが多いため、運賃収入以外の収益源を確保する目的で、ほとんどの路線で全面広告車両が運行されている。鉄道雑誌などではラッピング車両なる呼称が定着する以前から、「広告電車」という呼称が広く使われていた。

路面電車ではない通常の鉄道車両でも、都道府県や政令指定都市の屋外広告物条例の規制を受ける形であるもの、同様な手法で広告媒体として鉄道事業者が用いる場合がある。このような事例として古くは江ノ島電鉄近畿日本鉄道(近鉄)のアートトレイン(アートライナー)等がある。

鉄道車両の車体外部を使った広告の場合、バスや路面電車より車両のサイズが大きいことや、複数の都府県にまたがって運行される路線が多い(運行各都府県・政令指定都市の屋外広告物条例の規制を受ける)ことから、車体のほぼ全体を覆ったものは少なく、多くはドア周辺や窓の下などに帯状やスポット的に広告フィルム(ポスター)を張る手法である。また、1編成が同じ広告主(スポンサー)で統一されるものがほとんどであるが、女性専用車両を実施している路線では編成中の該当車両に対し女性向けの商品(化粧品等)のラッピングをするという事例もある(Osaka Metroなど)。車両内部の場合はドアや床などに施されている[15]

2002年(平成14年)に東京都屋外広告条例が緩和され、鉄道車両へのラッピング広告が可能になって以来、ADトレインなどが日本の至る地域で見掛けられるようになった。

古くは1987年(昭和63年)に東日本旅客鉄道(JR東日本)がコカ・コーラ社と契約し、全面広告の115系一編成を信越本線で運用していた例(通称「コカ・コーラ電車」)もある。この全面広告編成では車内に自動販売機も設置されていた。

また近年ではドラえもん[注釈 1]アンパンマン[注釈 2]名探偵コナンなど、アニメとのコラボをしたラッピング電車も多数運行されている。阪急電鉄では2015年(平成27年)より1000系を使用しリラックマすみっコぐらしちいかわなどのキャラクターとコラボしたラッピングトレインを毎年期間限定で運行している。

航空機

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エアアジアの広告塗装機

列車やバスと同様に、航空機にも機体をラッピングする広告が施されることがあり、『アドカラー』と呼ばれる。特に運賃以外での収益拡大が求められる格安航空会社などでこの傾向が顕著である。

日本でもスカイマークエアラインズ(現:スカイマーク)など新規参入会社で、初期の頃に機体全体を使った広告機[16][17][18] が存在したが、2015年時点で機体全体を使用した広告塗装機は日本には存在していない。

機体広告は、機体が大きいだけに塗装費用が膨大になり広告料が高くなるわりには、飛行中は広告を見てもらえない、あるいは見えても小さすぎる、また空港に駐機中も空港に来る人の中で一部の人にしか見てもらえないなど、宣伝効果が小さいため広告主が少ない現状にある。

純粋な広告とは言いにくいが、航空会社と外部企業などとの提携によるイベント的な塗装(オリンピックFIFAワールドカップなど国際的なスポーツイベントに関連するもの、ポケットモンスターディズニーなどのキャラクターをあしらったものが多い)がされることがある。

機体に直接塗装する方法と、あらかじめ印刷されたフィルムを貼る方法があり、ANAの『お花ジャンボ』は塗装で18日間かかった。フィルムは住友スリーエムが大手メーカーで、『JAL悟空』はフィルム210枚を使用している。

フィルム貼り付けの場合、飛行中は空気抵抗のほかに気圧や温度の変化で機体が膨張・収縮するためフィルムが緩む・裂ける・剥がれることから採用されることは少ない。採用されても空気抵抗や機体の膨張・収縮の影響が小さいところに部分的に用いられる。

エアレースなどスカイスポーツにおいても、自動車レースと同様にスポンサーのロゴやチームカラーに塗装した機体が多い。

広告型・キャンペーン連動型
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機体を広告として用いるもの、またはある特定のキャンペーンの一環として塗装されるもの。

航空会社のキャンペーン型
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JAL×コブクロジェット
20th ARASHI THANKS JET(2019年)
JALドリームエクスプレス ファンタジア80 (2020年)

航空会社自身の広告宣伝としてキャラクター等を使用するもの。

  • その他
    • 1995年 9月:日本エアシステム『ピーターパンフライト』:ダイアナ妃が名誉総裁を務める「ピーターパンこども基金」との協賛。
    • 2001年10月:日本エアシステム『フレンドリーバード』:創立30周年を記念し日本・中国から寄せられた鳥を題材とした児童画コンテストの優秀作品と松本零士の描いた鳥のイラストのデザインを施した。
    • 2013年10月:ピーチ・アビエーション A320-214 1機 『MARIKO JET』:篠田麻里子とのコラボ[20][21]。2014年5月に運行終了。
    • 2014年:スカイマーク『ワンピースジェット』

脚注

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注釈

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  1. 北海道旅客鉄道(JR北海道)のドラえもん海底列車など。
  2. 四国旅客鉄道(JR四国)のアンパンマン列車など。

出典

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  1. 1 2 3 4 赤い京急電鉄に突如現れた「白い電車」の正体”. 東洋経済新報社. p. 2. 2019年9月12日閲覧。
  2. 1 2 赤い京急電鉄に突如現れた「白い電車」の正体”. 東洋経済新報社. p. 1. 2019年9月12日閲覧。
  3. 都バスが変身!ラッピングバスが東京にデビュー!(東京都交通局トピックス・インターネットアーカイブ)。
  4. 『小田急 F-Train』8月3日(水)より運行開始 (PDF). 小田急電鉄 (2011年8月2日). 2026年1月29日閲覧。
  5. 小田急線「藤子・F・不二雄」ラッピング電車、都条例抵触で運行終了へ”. 新宿経済新聞 (2011年9月22日). 2026年1月29日閲覧。
  6. 小田急の「ドラえもん列車」、都条例違反 事前申請怠る”. 朝日新聞デジタル (2011年9月22日). 2020年9月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年1月29日閲覧。
  7. 『小田急 F-Train II』7月20日(水)より運行開始 (PDF). 小田急電鉄 (2012年7月10日). 2026年1月29日閲覧。
  8. 「北海道浜中町・ルパン三世はまなか宝島プラン」ルパン三世ラッピング列車・バス・ハイヤーの紹介 - 浜中町
  9. 「マレーシア独立55周年記念 ラッピングタクシー走行中」”. 共同無線タクシー協同組合. 2014年4月26日閲覧。
  10. “「“プレミア円陣タクシー”運行!乗車すると「手帳」ゲット」”. サンケイスポーツ. 2014年3月11日.
  11. “【ミズノ㈱提供 特別仕様のラッピングタクシー】3月8日より運行開始”. 日の丸交通. 2023年3月7日. 2023年4月13日閲覧.
  12. アニメ「きんいろモザイク」 ラッピングタクシー”. コンドルタクシーグループ (2016年11月4日). 2018年8月4日閲覧。
  13. 「ラブライブ!サンシャイン!!」コラボタクシー運行中|伊豆箱根タクシーグループ
  14. 黒宮丈治 (2016年9月17日). 映画と異例のコラボ―業界の異端児・コンドルタクシーが挑戦を続ける理由”. シネマズ. 松竹株式会社. 2018年8月4日閲覧。
  15. “JR東日本、青梅線エリアの魅力発信 - ラッピング列車や臨時列車も”. マイナビニュース. 2018年6月20日.
  16. 機材広告_マイクロソフト/JA767B Airliners.net
  17. 機材広告_ヤフージャパン/JA767A Airliners.net
  18. 機材広告_USEN/JA767A Airliners.net
  19. アイベックスエアラインズ「むすび丸ジェット」の就航日程を決定! (PDF). IBEXエアラインズ (2018年5月2日). 2018年10月4日閲覧。
  20. 篠田麻里子さん Peach の CA に!〜大阪(関西)-東京(成田)線で初フライト〜』(PDF)(プレスリリース)Peach Aviation、2013年9月28日http://www.flypeach.com/Portals/1/PressReleases/2013/130928-Press-Release-J.pdf2015年3月17日閲覧 
  21. 社員が考えた「空からマリコ」ピーチ・アビエーションのブランディング戦略が成功した理由”. 日経BP社 (2013年10月30日). 2015年3月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年3月17日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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