この記事は英語版の対応するページを翻訳することにより充実させることができます。(2026年3月) 翻訳前に重要な指示を読むには右にある[表示]をクリックしてください。
|
劣化ウラン(れっかウラン、英語: depleted uranium、略称:DU)は、ウラン235の含有率が天然ウランの0.720%[1][2]より低くなったものと定義されている[1]。ウラン濃縮の際に副産物として生成されるものは、ウラン235の同位体存在比が0.2から0.3%[3]と半分未満である。またウラン235の濃度が低下した使用済み核燃料をさすこともある[3]。減損ウラン(げんそんウラン)とも呼ばれる[1]。
とくに天然ウランからウラン235を分離した残渣物を劣化ウラン[4] 、使用済み核燃料起源のものを減損ウラン[5]という事もある[3][6]。
概要
[編集]天然ウランには、熱中性子による核分裂反応を起こしやすいウラン235と起こしにくいウラン238が含まれ、このうちウラン235の含有率は0.7%程度である。この天然ウランからウラン濃縮によって濃縮ウランを得た後に残された部分は、通常、ウラン235の含有率が0.2%程度であり、天然ウランに及ばないため、これを劣化ウランと呼ぶ。さらに濃縮を行なって劣化ウランに残存するウラン235の割合を下げ、より多くの濃縮ウランを得る事もできるが、新たにウラン鉱石を採鉱・精製・濃縮することと比較してコストがかかるために行われない。濃縮の際に六フッ化ウランとするため、劣化ウランを利用する場合には加水分解して酸化物とするか、さらに還元して金属として用いる。
用途
[編集]一般産業での用途
[編集]
- 高密度を利用した用途
- ウランは密度が高い金属であるため、航空機などのカウンターウェイト、バランサー、高慣性ローター、フライホイール、回転ボールジョイントとして使用されている[7]。
- 放射線遮蔽能力を利用した用途
- 原子番号が大きいことからX線やガンマ線の遮蔽効果が大きく、医療用放射線機器等から発生する放射線の遮蔽、加速器のコリメータおよび遮蔽、使用済燃料輸送容器、高レベルガラス固化体容器に用いられている[7]。
- 高密度・高強度を利用した用途
- →「劣化ウラン弾」も参照砲弾弾頭のペネトレータとして利用される[7]。アメリカなど一部の国では戦車砲の徹甲弾や航空機関砲の弾丸として用いられている。通常用いられるタングステン等よりも特性面で優れているためである。さらに、元が核燃料製造時の廃棄物であるので原材料のコスト面でも有利である。ただし、ウランはタングステンよりも化学的に活性であり粉末が空気中で自然発火するほどであること、放射性物質であることなど、取り扱いに難があるため、コスト面を比較する上ではメリットについては加工や加工設備に必要なコストも考慮する必要がある。そのほか、M1エイブラムス戦車の改良型は、複合装甲の部材として用いており、また核兵器のタンパーとしても用いられている。
- 化学的特性を利用した用途
- 機能材料、ガスの純化、染料・顔料、水素吸蔵合金に利用される[7]。 大規模大容量蓄電施設に使われるレドックス・フロー電池で、現在主に使われているバナジウムより安価で、充電損失が少ない優れた特性を有することで、実用化が期待されている[8]。
原子力産業における用途
[編集]ウラン235の濃度が低いため、劣化ウランは軽水炉の核燃料としては利用できない。しかし、ウラン238に中性子を吸収させ、核分裂を起こしやすいプルトニウム239へと転換させることができるため、高速増殖炉に用いる燃料として期待されている[1]。
医学的危険性の主張と反論
[編集]危険性の主張
[編集]劣化ウランは重金属である。したがって、他の重金属と同様に重金属中毒の原因となる。主に腎臓の障害を引き起こす。
また残留放射能による被曝も指摘されており[9]、湾岸戦争で劣化ウラン弾を使用した地域で白血病の発症率や奇形児の出生率が増加した、あるいは米軍帰還兵の湾岸戦争症候群などの健康被害の原因が劣化ウラン弾だと主張する意見がある。[10] 湾岸戦争後のGulf War Syndromeなどに現れたように、劣化ウランの粉塵を吸い込んだ場合、あるいは劣化ウランを使用した弾を受けることによる中毒および放射線障害の可能性が検討されている[11][12]。
反論
[編集]こうした環境問題について、アメリカやWHOは証拠が不十分と否定的な立場をとっている(ただし、WHOは子供が口にすることのないように警告している)[13]。
関連項目
[編集]脚注
[編集]- 1 2 3 4 物理学辞典 2005, 劣化ウラン.
- ↑ 理化学辞典 1998, ウラン.
- 1 2 3 理化学辞典 1998, 劣化ウラン.
- ↑ 用語辞典 1974, p. 354, 劣化ウラン.
- ↑ 用語辞典 1974, p. 117, 減損ウラン.
- ↑ 発電工学 2003, p. 301.
- 1 2 3 4 劣化ウランとその利用 - 原子力百科事典ATOMICA
- ↑ “劣化ウランを蓄電池「レドックスフロー電池」に再生、世界初の成果目指す 原子力機構が開発に乗り出す”. ニュースイッチ-日刊工業新聞 (2024年1月14日). 2024年1月19日閲覧。
- ↑ 嘉指 信雄「非人道的兵器としての劣化ウラン弾 : 戦争と放射線被曝をめぐる生-政治 (科学技術の暴力)」『平和研究』第48巻、2018年、2025年10月21日閲覧。
- ↑ Depleted uranium risk 'ignored' BBC NEWS、2019年10月4日閲覧。
- ↑ Briner, Wayne (2010-01-25). “The Toxicity of Depleted Uranium” (英語). International Journal of Environmental Research and Public Health 7 (1): 303–313. doi:10.3390/ijerph7010303. ISSN 1660-4601. PMC 2819790. PMID 20195447. http://www.mdpi.com/1660-4601/7/1/303.
- ↑ Bleise, A; Danesi, P.R; Burkart, W (2003-01). “Properties, use and health effects of depleted uranium (DU): a general overview” (英語). Journal of Environmental Radioactivity 64 (2-3): 93–112. doi:10.1016/S0265-931X(02)00041-3. https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0265931X02000413.
- ↑ WHO makes Recommendations on Depleted Uranium and Health in New Monograph
参考文献
[編集]- 原子力用語研究会 編『図解 原子力用語辞典』(新版)日刊工業新聞社、1974年。
- 長倉三郎ほか 編『理化学辞典』(第5版)岩波書店、1998年。ISBN 4-00-080090-6。
- 物理学辞典編集委員会 編『物理学辞典』(三訂版)培風館、2005年。ISBN 4-563-02094-X。
- 吉川 榮和、垣本 直人、八尾 健『発電工学』(社)電気学会〈電気学会大学講座〉、2003年。